過去の法話

混迷の世に必要なこと

奈良県 宝泉寺住職 北野哲由 老師

20世紀の歴史はまさに動乱の100年でありました。
やっと平和になり、人類の幸せがもたらされると思われました。
ところが、その幸せになるべく発達したいろいろの科学文化は、かえって地球環境を汚染して人類や自然の生息に危険をもたらす結果となりました。

21世紀になれば何とかこの危険が打開されるようになるのではと期待して迎えたのですが、その21世紀の幕開け早々から、これはまた想像もできない大事件が相次ぎ、更なる混沌とした様相を極めてまいりました。

今、地球上で戦われている争いの根底は互いが信じる宗教の違いより生じた争いであります。
いうまでもなく、本来宗教は人類の幸せのために存在するはずであります。それが信じる宗教が異なるがゆえに争わねばならないとは何という悲しいことであり不幸なことでありましょうか。そしてそのために犠牲となった多くの人たちが難民となって路頭に迷っているのが現状であります。

まさに、21世紀も不安の世紀となることは避けられない現状です。
この不安を除き安心を頂くのが宗教の本筋であるならば、今私たちは何をいかになすべきか、今こそ私たちは心して仏様の御教えに、ご開山様のお言葉に参ずべきでありましょう。
私たちはどれほど経済力が強くとも、社会的に優位な立場にあろうとも、所詮自分ひとりでは生きてゆくことはできません。
そのことを、どなたかが、このように言っております。

人間が生きているということは
誰かに生命を頂いていることだ
人間が生きていくということは
誰かを支えていることだ
誰かを頂いたなら 誰かに返していこう
その時になって 慌てないように

道元禅師様はこれを四つの智恵(四摂法-ししょうぼう-)としてお教え下さいました。

1つには「互いに助け合う」こと(布施)
2つには「優しい言葉」を使うこと(愛語)
3つには「共に利益を廻らす」こと(利行)
4つには「同じ立場で」生きあうこと(同事)

これが4つの智恵の実践項目であります。
同じ地球の上で共に生活しあう人間同士、互いの幸せを願う者同士、絶対に守り合わねばならない約束事ですよと必須条件としてのお示しであります。

2002/12/10