禅〜凛と生きる〜|曹洞宗近畿管区教化センター

禅のお話

今月の法話

日常に生かす坐禅

滋賀県 青龍寺住職 桂川道雄 老師

お寺の住職さんが、「坐禅を日常生活に活かしましょう」と、よく言われます。一般の檀信徒の方々が、「坐禅を日常生活に活かす」とはどういうことでしょうか。ご本山の雲水さんのように、日の出前から坐禅堂に籠もる事が一般の人々の坐禅でしょうか。雲水さんのように、日中は作務と言ってひたすら掃除に汗を流すことを求めているのでしょうか。

「坐禅を日常生活に活かす」と言うことを考える前に、「坐禅とは何か」を考えてみたいと思います。

坐禅は呼吸を整え、揺れ動く自分の心を落ち着けることです。心の中に住んでいる、もう一人の自分との出会いのひと時です。坐禅の「坐」の字は、「土」の上に「人」と云う字を二つ書きます。多くの仲間と一緒に坐禅に励んでいる様子と共に、日頃の自分と坐禅をして、心を落ち着けている自分の出会いも示しています。

「呼吸を整えて心を静かにすることが坐禅である」と解釈するのであれば、坐禅堂を離れても立派に坐禅ができます。ヤル気であれば、何時でも何処でも、坐禅はできるのです。通勤中の満員電車の中でも坐禅をすることが出来るのです。こんなやかましい雑音の多い満員電車の中でも、と不思議に思われるかもしれませんが、坐禅中のように、背筋を伸ばし、下腹に力を入れて息を総て吐ききります。下腹を緩めますと、息が入ってきます。身体いっぱいに息が入ったら、ゆっくり下腹に力をいれつつ、息を吐き出すのです。

坐禅中の一呼吸は、日常より少し感覚が広い一呼吸です。呼吸を整えますと、心が落ち着いてきます。頭に上っている血が下におりてきて、頭が軽くなるのです。

腹が立って腹が立って仕方が無いときも、坐禅中のように、背筋を伸ばして深い呼吸をしますと、腹立ちが和らぎ、今までと違う考え方に出会えます。悲しくて涙が止まらない時も、呼吸を整えますと、悲しみは自分だけでなく、すべての人々も背負っているものだ、と気がつきます。

「坐禅を日常生活に活かす」とは、短い時間でもかまいません、少し心を落ち着ける機会を作りましょうということです。

背筋をしっかり伸ばして、吸う息、吐く息に注意をして、心を落ち着ける。坐禅は何時でも何処でもできるものです。

2006/02/07
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