禅〜凛と生きる〜|曹洞宗近畿管区教化センター

坐禅のすすめ

参禅体験レポート

井伊家とともに、禅の心とともに

祥寿山 清凉寺

滋賀県彦根市
清凉寺

畏れ多くも参禅デビュー

あ、痛ぁっ!

…足が痺れたわけではありません。『そうきたか。まいったな』という心の声です。

清凉寺。そこは想像以上に広いお寺です。清々しい名を持つこちらは、井伊家の菩提寺だそう。何とも畏れ多い場へ参上してしまいました私は、参禅会の体験取材者。それも若葉マーク以前、今朝芽を出したばかりの超初心者でございます。

清凉寺
歴史の風格あふれる境内前には、参禅道場の石碑が。
清凉寺の禅堂
何とも立派な禅堂は、
内単、外単合わせて100を数え、
企業の研修としての参禅にも利用される。

いつか生活の一コマに?

こちらでは、「白雲会」という会の皆様が参禅を続けておいでとか。はじめて数年の方たちから、30、40年以上という方々までご在籍で、継続の理由をお聞きしたところ、『惹かれるものがある』、『心気が休まる』、『生活のリズム(になっている)』、『求道に終わりなし』というお声もありました。

同日はもう1人、女性の方が初参加とのことで、初心者へのお作法の説明がありました。が、清凉寺では初参禅というその方とは違い、私はまごまごするばかり。ソックスを履いたまま、時計嵌めたまま、な、私に、皆様温かくご指導くださって、ひたすら恐縮!で、ありました。

清凉寺での坐禅風景
自分に厳しく、また心を落ち着かせ、
ただひたすらに坐る…。
白雲会は日本で存続する参禅会では、
最も長い歴史があるとか。

無心以前!一度に覚えるなんて無理かも…

『坐禅って、ただ坐ってなーんにも考えずにいればいーんでしょ?その無心ってことが難しいんだろうけど…』。

などとお気軽極まる私は、坐るカタチに注意はあるだろうけれど、禅堂へ移る振る舞いからして、きちんとお作法があるなんて思い至らず、赤っ恥。

例えば歩く時の手のカタチ。左手の親指を他四指の中にグーにして、その上からパーの右手で覆い、それを鳩尾(みぞおち)あたりに据えるのですね。坐る前にも両隣や向かいの人へ挨拶を…とか、クッションみたいな坐蒲(ざふ)なるものの扱いとか、知っている人たちには何でもないことが、とても覚えきれず(泣き)。

それでも背筋を伸ばし顎を引き、目は半眼に、手も仏様のように親指同士を合わせ卵を包む形にし、舌は上の前歯の裏の方に付けて、というスタイルだけは何とか覚えつつ、坐禅で心を落ち着けるより前に、不調法なこの心自体をいれかえてかかる必要ありと、いたく恥じ入りました。

清凉寺での坐禅風景

未体験と初体験。その大きな違い

さて、禅堂です。大変立派なのですが、こちらのように独立した構えがあるうえに、それが二階に設けてあるというのはこれまた希少な例とのこと。私ごときが参禅デビューしては、お堂がお怒りかも。いいて、そんな懐の狭いお堂ではありません。

一般の参禅者を募られて長いとのことですし、白雲会さんも、新しい人を交えた方が活気づくとか。この日のお食事の際にも、一種のフレッシャーズ効果か、「五観の偈」を唱える皆様の声がいつもより大きかったと聞きました(お役にたった?)。

お食事といえば、その内容ですが、身体の必要とするものをやさしい味に仕上げてあるという感じで、さすが手作り!!ヘルシーの三つ星でした。

法話がまた、曹洞宗の開祖道元禅師の教えを教本とし、現代の問題点に照らし合わせ、解決への取り組み方を説くといった、とても分かりやすくためになるもの。人間のやっていることは時代が進んでもあまり変わらぬものなのだと、本質を問われる思いでした。また、問題解決の方法を論じるだけでは意味がなく実践あってこそという点に、未体験の参禅から初体験へ踏み切った、この日の自分を当てはめてみて、単に知識をふりかざす無意味さを教えられた気がします。食事も法話も染みましたねぇ〜。

桂川道雄老師の法話
示唆に飛んだ桂川道雄老師の法話は、
頭に知識を詰め込むだけではどうにもならない、
何ごとも実践が肝心と説く。

坐禅は自己点検。頭も心も身体も還元

坐することは仏に還ること…。お釈迦様のカタチを模することで、自分の中の硬化した部分を休め、己に今あるもので満足することかな、と、お話をうかがったり皆様を見ていて思ったものです。

しかし辛かったのが苦手な腹式呼吸。懸命にお腹を出してはすぼめていると『ぐーぅ』。う、鳴ってもーたぁ。静かな空間に恥ずかしー音が数回…。でもこれは、お腹が空いて、ではないと思うのです。

坐禅は自己点検ともお聞きしましたが、人間は自分の身体が分かっていません。普段猫背で焦りまくって仕事して、せわしい息しかできていない私。きっとこの時取り戻せた正しい姿勢に、お腹の動きが元気になったのです(ただの思い込み?)。

そういえば坐禅の呼吸は脳にもいいようですし、もちろん精神面においても、軌道修正。

禅にメリットを求めるのは邪道でしょうが、せっかく静かに自分と向き合えるひとときです。私のようにワガママな現代人は、ジコチューと後ろ指を指される前に、絶対こういう豊かな時間を持つべきだと、思うのでありました。

清凉寺の精進料理
清凉寺での昼食風景
静かにいただく昼食も、
新参者は教えられることが多い。
寺院概略

滋賀県彦根市の東北、石田三成の城のあった佐和山の麓に建つ。関ヶ原合戦後、井伊直政が封ぜられ、慶長7年(1603)直政の墓所となり以来井伊家代々の菩提所となった。光成と奥方および家老島左近の屋敷のあった所が境内地。

本堂は宝永5年に再建。
歴代住職は、井伊家が徳川幕府の重臣として全国から高僧を請じたことにより代々第一流の和尚であったため修行道場として名高い。

清凉寺清凉寺
「清凉寺坐禅会」DATA
【開催日】
毎月第3日曜日
【時間】
午前9時~12時
【内容】
坐禅会(坐禅・法話・作務・昼食)
【会費】
昼食付き600円
坐禅のみ200円
【拝観料】
無料
【TEL】
0749-22-2776
※開催日は変更される場合があります。
※必ず事前にお問い合わせのうえご参加ください。
参禅会スケジュール
9:00 坐禅
9:45 休息
10:00 法話
11:00 作務
12:00 昼食
交通アクセス
住所 滋賀県彦根市古沢町1100
交通 JR「彦根駅」から徒歩約25分
※記事は取材時点での内容です。
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