禅〜凛と生きる〜|曹洞宗近畿管区教化センター

坐禅のすすめ

参禅体験レポート

東洋一の達磨画が印象的な道場

瑞雲山 三松寺

奈良市七条
三松寺の坐禅

境内に響くナゾの声

大和郡山市にほど近いこの地には、かつては金魚を育てる池が点在していましたが、現在は宅地開発が進みずいぶん様子が変わったそうです。山門をくぐり、なだらかな参道を進むと、お寺の静けさの中に響く、気合いに満ちた声が聞こえてきました。何だろう?と思いながら歩き続けると、境内の南側に鉄筋コンクリート造りの建物を発見!実はこの建物、時には空手、剣道、合気道の道場に。さらには社員研修から書道教室に至るまで、ありとあらゆる「修行」に対応したマルチユース坐禅堂なのだとか。ちょうど、剣道の稽古が行われていました。
「メーンッ──」。

三松寺本堂剣道の稽古

ひらかれた坐禅堂

江戸時代に荒廃してしまった坐禅堂でしたが、先代の皆川英眞老師が約40年前にその復興を決意し、教師を辞めて托鉢をして資金を集められました。

「地域にひらかれた道場にしたい」という信念のもと、多くの方々の協力によりこの革新的な坐禅堂が建築されました。当時は高度成長期の真っ只中。経済発展を追い求める時代に一石を投じる意味もあったといいます。坐禅をはじめ、あらゆる精神文化の拠点として、その心は現在も受け継がれています。

道場にやってくる子どもたちは、本堂の前でご本尊に一礼していきます。特に指導はしていないそうですが、自然と感謝の気持ちで掌を合わせます。お寺だからこそこんな気持ちになるのでしょう。元気よく「こんにちは」と挨拶してくれる姿に、とてもすがすがしい気持ちになりました。

三松寺風景
鉄筋3階建ての坐禅堂は、大和青少年文化研修道場として広く活用されている。
鉄筋3階建ての坐禅堂は、
大和青少年文化研修道場として広く活用されている。

巨大なダルマさん

道場に入って驚かされるのが、東洋一大きいと言われるダルマさんの絵です。正面の壁一面に描かれたダルマさんのギョロッとした眼の迫力に圧倒されます。

この絵は、旧一万円札の聖徳太子を描いた肖像画の第一人者、馬堀喜孝画伯によるもの。先代住職の托鉢姿に感動し、その人柄に惚れ込んだ画伯は、全身全霊を込めて筆をとりました。その生涯で最も大きい作品とされ、渾身の一枚です。ダルマさんの表情にその気迫が表れています。

禅宗の祖である達磨(ダルマ)様に見守られるように坐禅をする参禅者。
禅宗の祖である達磨(ダルマ)様に
見守られるように坐禅をする参禅者。

仲間とともに坐禅を続ける

夕方5時を過ぎて控室に向かうと、すでに参禅の方がいらっしゃいました。「40歳の時から坐禅会に参加しています」という福田庄之助さん。

お歳を聞いてびっくり!!すでに74歳だそうです。道場が出来てから、しばらくしてずっと参加されている一番の古参でした。「一人では出来ないが、みんなとなら出来る」と坐禅を続ける秘訣を教えていただきました。日々の生活でも坐禅を欠かさないそうです。

感謝の気持ちで坐禅の前に自主的に清掃を行う。
感謝の気持ちで坐禅の前に自主的に清掃を行う。

これぞ夜の坐禅会

あたりが薄暗くなり、夜の7時が近づくと、木板(もっぱん)が打ち鳴らされ、坐禅堂へ移動しました。さきほどまで、剣士たちの激しい声が響いていた道場が、全く違う場所のように静寂の空間なっていました。

正面にはユラユラと揺れながら、堂内をうっすらと照らす蝋燭の炎。想像以上に暗く、まるで月あかりの下で坐禅をするかのようです。昼夜問わず照明を欠かさない現代人にはこの闇が新鮮に感じられ、神経が研ぎ澄まされていくようでした。

十数名の参加者が静かに坐禅堂に入り、深々と合掌礼拝して単(坐る場所)へと歩いて行きました。蝋燭の灯で照らされたダルマさんの表情も、明るい時と少し違い「さ、坐禅が始まるぞ」という厳しい表情に感じられました。坐禅が始まってから少したった頃、静けさを破って住職の皆川大真老師の提唱(お話)が始まりました。

「坐禅に点数はない!100点の坐禅や20点の坐禅もない、大草原にいるようにゆったり息を吸って坐って欲しい」。広い堂内に響きわたる励ましの言葉でした。

街の喧騒から離れた静かな道場に響く警策(きょうさく)の音と、時おり耳に入る風や車の音…。
夜坐(やざ)ならではの雰囲気です。しめくくりには、修行道場と同じように時を告げる太鼓と鐘が鳴り、坐禅が終えられました。

坐禅堂から出ると目下に広がる夜景が、張りつめた空気から解放された心を和ませてくれました。控室に戻り、お茶を飲む皆さんの表情が、少し明るく軽くなっているのが印象的でした。

昼は「剣士たちの鍛錬場」、夜は「ほとけの坐禅堂」として「動」と「静」とをあわせもつ凛としたお寺でした。

三松寺での坐禅風景
三松寺での坐禅風景
住職の皆川大真老師は先代の意思を継ぎ、ひらかれた道場を守る。
住職の皆川大真老師は先代の意思を継ぎ、
ひらかれた道場を守る。
寺院概略

行基に帰依していた法親王真恵宗寂大師の創建で平安時代には南都十五寺に数えられたと伝えられる。

時代の変遷に伴い衰微した時期もあったが、延宝7年(1679年)に大和郡山城主・本多政勝一族の士族寺として建立され、その後、松平、柳沢家など武家の菩提寺として栄える。

境内には茶の湯に造詣が深く、陶業を奨励した大和郡山藩主 柳沢堯山の創建した茶室「送月舎」が現存する。

三松寺風景
「三松寺坐禅会」DATA
【開催日】
毎週土曜日
【時間】
午後6時30分〜9時
【内容】
坐禅・作務
【参加費】
志納
【TEL】
0742-44-3333
※初心者の方は早めにお越しください。
※徹宵坐禅会(年越し坐禅)/ 12月31日午後10時〜1月1日午前4時頃
参禅会スケジュール
18:30 受付開始
19:00 坐禅1
19:40 経行(歩く坐禅)
19:45 坐禅2
20:30 お茶・片付け
21:00 散会
交通アクセス
住所 奈良市七条1-26-10
交通 近鉄「九条駅」より徒歩15分
※記事は取材時点での内容です。
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