禅〜凛と生きる〜|曹洞宗近畿管区教化センター

坐禅のすすめ

参禅体験レポート

禅の名刹にふさわしいたたずまい

鷹峰山 源光庵

京都市北区
悟りの窓 迷いの窓。丸窓は「禅と円通」を、角窓は「人間の生涯」を象徴し、生死病死の四苦八苦を表している

悟りの窓からのぞく雪景色

鷹峰に位置する源光庵は、卍山道白禅師ゆかりの古刹。夜半から降りだした雪で白く化粧した境内は静寂そのものである。

─ 気温3度 ─

底冷え厳しい冬の京都。それにしても寒い朝だ。

早朝6時30分を過ぎると、息を白くしながら参加者が集まりはじめる。張り詰めた空気の堂内。「悟りの窓」からのぞく雪景色はなんとも風情がある。雪の少なくなった今ではめったに見ることのできない贅沢な光景である。

7時から朝のお勤め。静かな堂内に心地よい読経の声が響き渡る。ひきつづいて、坐禅。坐蒲を手に堂内に足を運び入れる。

─ 止静三世声 ─

坐禅開始の鐘が鳴る。

初心者には事前に説明がされているので、静かに坐禅がはじまる。30分の坐禅が2回。あいだに経行(歩く坐禅)が入る。

『ピシッ』。

時おり肩を打つ、警策(きょうさく)の音が静寂を打ち破る──

源光庵源光庵

ひらかれた坐禅会 出会いをかさねた42年間

「やるからには一人でも続ける」。

その決意で鷹峰龍雄老師が参禅会をはじめたのが42年前。「来る人は迎え 去る人は追わず」の心で初心者からベテランまで広く門戸をひらく参禅会には、全国から参禅におとずれる人が絶えない。その数は延べ1万5千人を超える。

「さまざまな出会いがあります。ご参加いただくみなさんに励みをいただいています」と老師。会長をつとめる高橋良一さんは「いつ来ても、たまに来てもかわらずあたたかく迎え入れてくれる」と、会の魅力を語る。お寺と参禅者が共鳴し、互いに潤いがもたらされる関係だ。ただひたすらに続けられる中で生まれるものである。

本堂を禅堂に見立てて面壁坐禅。
本堂を禅堂に見立てて面壁坐禅。

観光から一歩深めたい

今回の参加者は15名。雪の影響もあり、いつもの約半数とのこと。そのうち3名が初参加だ。

「観光だけではない、もっと深い京都を知りたかった」と話す斎藤謙介さんは東京からの参加。「しびれと同時に、寒さで感覚がなくなりました」と冬の坐禅の厳しさを体感。しかし「この満足感はふつうの観光では得られない」と、その顔はとてもすがすがしい。

「観光雑誌を見て」と話す安川勇人さんは学生さん。友人の谷僚さんと「朝5時に大阪を出発した」と、気合い十分である。

「みなさん、前日から坐禅の心境になってるはずですよ」と老師。乗京俊一さんは「前の晩は禁酒です」と笑う。寒い冬の参禅会に、早朝から駆け付ける参加者の意識の高さには脱帽である。

般若心経を唱える、朝のおつとめ。初心者には経本が用意されている。
般若心経を唱える、朝のおつとめ。
初心者には経本が用意されている。
堂内に入る参加者。坐禅中は暖房器具を使わないので、寒さが身にしみる。
堂内に入る参加者。
坐禅中は暖房器具を使わないので、寒さが身にしみる。

気づきを得ることができるお話

参禅のあとは別室でお茶を飲みながらのお話。冷えた身体にしみわたる格別のお茶だ。

この時の老師からの話を楽しみにしている方も多い。

「日々の反省、自己を正すきっかけをいただく」と話す垂澤祥夫さんもその一人である。

坐禅後のお茶とお菓子に場も気持ちも、ほっとなごむ。
坐禅後のお茶とお菓子に場も気持ちも、ほっとなごむ。

坐禅が生活の張りを生む

「朝粥につられたんですよ」。約10年前に初坐禅の細口実世さんは、その動機を笑って振り返る。

現在はないが、当時は坐禅のあとに朝粥がふるまわれていた。まったく坐禅をするとはきいていなかったのだとか。「坐ったらスーッと気持ちよかった」。せっかくだからと思い切って坐禅に挑戦した細口さんは、すっかり坐禅に魅せられてしまう。

西本徳治さんは妻の裕子さんと一緒に参加する。

「坐らないと、気持ちがわるい」と、坐禅を欠かすことができない。

「月末にもなると仕事でぐったり。でも、月はじめの坐禅会で『今月もがんばるぞ』ってなれるんです」と先の細口さん。

参加の人々それぞれの、生活にハリを生む大切な時間となっている。

源光庵源光庵

坐禅は人生にプラス

「機会があったら、2度3度と来てくださいよ」。こう初めての方に話すという老師。「きっかけが大切。その機会を与えたい」。

一人でも多くの人が坐禅に出会い、坐禅が生きる力となることを願う思いが多くの人々の心に届き、その輪は今も広がり続けている。

源光庵のもつ静かな雰囲気と、そこに集い坐す人々。会のあたたかさと心地よい緊張が、坐る者にうるおいをもたらしてくれる気持ちのよい参禅会である。

鷹峰啓明師
鷹峰啓明師
「閉ざしてはダメ」と参禅者との親睦も大切にされる鷹峰老師。
「閉ざしてはダメ」と参禅者との
親睦も大切にされる鷹峰老師。
寺院概略

貞和2年(1346)に臨済宗の寺として創建されたが、元禄7年(1694)に卍山道白禅師により曹洞宗に改められた。

本堂内の丸窓「悟りの窓」と角窓「迷いの窓」で知られる禅刹。そこから切り取られた枯山水は四季を通じて風情があり、とくに紅葉は趣深い。

卍山禅師が京都宇治田原の山中にて御感得された霊芝観音が秘仏として安置されている。

また、伏見桃山城の遺構である血天井は、石田三成に敗れ鳥居元忠一党が自刃した床板。手形や足形が生々しく残る。

境内は静けさに包まれ、禅の古刹にふさわしい、厳粛な雰囲気がただよう。

源光庵
悟りの窓 迷いの窓。
丸窓は「禅と円通」を、
角窓は「人間の生涯」を象徴し、
生死病死の四苦八苦を表している
「源光庵坐禅会」DATA
【開催日】
毎月第1日曜日
【時間】
午前7時~午前9時
【内容】
坐禅・茶話会
【会費】
無料
【TEL】
075-492-1858
※1・8・12月は休会。変更の場合あり。
※事前にご確認のうえご参加ください。
参禅会スケジュール
7:00 朝のおつとめ(般若心経)
7:20 坐禅1
7:50 経行(歩く坐禅)
8:00 坐禅2
8:30 放禅(坐禅終了)・作務または茶話会
9:15 散会
交通アクセス
住所 京都市北区鷹峯北鷹峯町47
交通 市バス「鷹峯源光庵前」下車すぐ
※記事は取材時点での内容です。
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