過去の法話

永遠の命

兵庫県 最明寺住職 大槻覚心 老師

人間とは生まれてからだんだん歳をとり老人になり、やがて病気になり、最後には結局死んでしまう生き物ですから、一面では大変はかない命を生きているといえます。しかし、そんなはかない命であっても、それが同時に永遠の命を生きているのですから不思議です。

あなたのお歳を仮に50歳としますと、あなたの命が50年前に始まったかといえば、そうではありません。

あなたが生まれる前にあなたは母の胎内にいたのです。その前は父や母の命としてあり、その前は祖父母の命としてあり続けていたのです。そんなふうに自分の命の始まりをたどってみてもその始まりをつきとめることは出来ません。おそらく地球に命が誕生した38億年前の命の始まりが、あなたの命の始まりでもあるのですから、すでにあなたの命の年齢は38億歳に達しておられるのです。

それにあなたが、永遠の命を生きておられるというのは、時間的な意味からだけではありません。例えば、あなたが、宇宙を旅される時、地球圏外で滞在することになれば、地球から水や空気や食べ物を持参しなければ生きていけません。その時あなたにとって水や空気や食べ物があなたの命だといえます。 しかし、反対に水や空気や食べ物はあなたによって新たなる命が与えられるのだともいえます。

また、生物にとっては太陽の光りは無くてはならないものですが、しかし、その光りはオゾン層などの大気圏に濾過された光りだけで、地球圏外の光りはかえって命をそこなわせます。

あなたの命を育んできた地球は今のあなたの命の源泉でもあるわけです。いずれにしても、私達の命と私達の環境である地球とは切っても切り離せない関係にあります。はかない命を生きていると思っておられるあなたも、永遠の仏さまのひとつの命を生きておられるのです。

2004/07/23