過去の法話

生まれ変わるとき

兵庫県 最明寺住職 大槻覚心 老師

世界一短い詩である俳句が国際的にも注目を集めています。
日本航空が俳句に倣った短い詩を募集したところ、22カ国から6万もの応募があったといいますから驚きです。その中から選ばれた作品が本にされました。

そのなかに
「繭ひとつ 自分で仕上げた寂しい牢屋 生まれる変わるために」
という作品がありました。

フィリピンの男の子の作品で、大岡信氏が俳句の定型にとらわれずに詩訳されたものです。氏はこの俳句を評して「繭は内側にいる蚕が自分で繭を作っています。この子はそれを観察して生まれ変わるためだと気がついたのです。」と、述べられています。

私の故郷でも幼い頃から中学校まで蚕を飼っており、蚕が繭を作り蛾となって飛び立つのを何度も観察していました。中学生だった私も、自分で仕上げた寂しい牢屋に閉じこもってそこから出る事ができなかった時期があります。確かに2度と味わいたくない苦い体験ですが、この俳句からあらためて学ぶことは、私が生まれ変わるためには、あの頃のつらい体験もまた必要だったということです。

最近学校や職場に行けずに家に閉じこもりの人が増え続けています。理由はともあれ、本人も家族も大変な重圧ですから、そうした状態から一日も早く解放されたくて、焦る気持ちはわかります。しかし、ある意味では、自分を辛いところに閉じ込めたり、また何かのきっかけをえて自分を解放したり、そうした事のくり返しによって人は精神の成長を遂げるのです。今の閉じこもりも、生まれ変わるための試練だと受け止めておれば、自分を解放するきっかけも必ず見つかると思います。

2004/03/10