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脇目もふらず花を摘む

奈良県 宝泉寺住職 北野哲由 老師

 

原始経典の1つであり、お釈迦様自らのお言葉である法句教の一句に

わき目もふらず 花を摘み集める
かかる人は 死をともない去る
まこと 眠りにおちたる
村を押し流す 瀑流のごとく

この法句教の一句はまさに2500年を経た現在への警鐘であります。

  経済成長の盛んな頃、鉄道沿線の山が崩されて次々と宅地造成され、みるみる間に新しい街が造成されました。所によっては急造成の整地のため、梅雨や台風期には脆くも土砂崩れで家が流されることもしばしば見聞きいたします。
  自然破壊、環境破壊に対する警告は早くから叫ばれて来ました。山林樹木の乱伐については「緑を守ろう」を合言葉に、宗門を挙げて「グリーンプラン」と名づけて緑を守る運動をしています。
私は、大和吉野に住んでいますが、一度伐採された山が再び元の山に戻るにはその家の一代では戻りません。父子代々受継いだ造林技術に従い、あたかも母親が子供を育てる如く愛情をもってこそ、銘木「吉野杉」が育つのです。
今一本の樹を植える間に百本の樹が伐採されているという熱帯雨林の問題は地球温暖化の一因としていわれています。
  自然環境が破壊されるとまず、動植物の生育条件に異常をきたし、やがて枯れてしまいます。また、オゾン状態の悪化や温暖化が進み北極の氷が溶けると海面が高くなります。仮に海面が一メートル高くなると沿岸の工業地帯を含む都市の大半が水没していまうのです。これらの地球破壊により50年後には人類の生存が危ぶまれるとの事、核による瞬時の破壊か、50年後に滅亡するかいずれも結果は同じです。
 
  最初に申しました「わきめもふらず 花を摘み集める」とは実は私たちの姿ではないでしょうか。
想像してみてください。「わき目もふらず花を摘み集める人」の姿とは、まさに限りない欲望の姿ではないでしょうか。
「欲望の強い人は利益を求めることが多いが故に苦悩もまた多い」と戒められています。私たちが子供の時代を憂い、孫の時代を心配することを既にお釈迦さまが心配してくださっておられたのです。利益を求めることのみ追求した科学文明の発達が、かえって人類の不幸をもたらした事実に想いをいたすべきことでありましょう。


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